主任の回想録

食肉センターのモツ煮定食

畜産のサブ御一行様を乗せた、本部のボロバン。
バイヤーの粗い運転の中、砂ぼこりを上げ、
水田の真ん中にそびえ立つ建物に向かう。

本日は食肉センターの見学でございます。

豚の屠畜と解体。

朝、店を出る際に主任(当時の上司)から、
「気をしっかりもてよ!」
「ぶっ倒れるなよ。俺が恥ずかしいからな!」

畜産のパートさんからは、
「私はとっても怖くて、行けないわぁ」
「無事で帰ってきてね」

チェッカーチーフからは、
「今日は見学だってね!頑張ってよ!」

店長からは、
「肉屋は大変だなぁ。俺は八百屋でよかったよ」

と、歓呼の声に送られてやってきました。

センターの事務所で、簡単な説明を受けた後、御一行様は工場棟へ移動。

建物の先までトラックが入れる区画に、
柵で仕切られたスペースに連れて行かれる。

程なく、
豚を積んだトラックがやってくる。
やはり豚といえども、雰囲気で察知するのか、
荷台の豚は暴れているようで、叫びの鳴き声。

荷台に乗っている作業員は、我々見学者がいたことに気づかないのか、
豚の尻を蹴飛ばして柵の中へ入れていたが、
途中で我々に気づき、手で押し入れる。

バイヤーは小声で、
「たまに内出血した肉があるだろ、こういう時にできるんだ」

次々と、柵の中に豚達が押し込まれる。

柵の中で待ち構える、白衣を着た男性3人。

一人が一匹を捕まえると、もう一人が豚の頭に器具をあてて電気ショックを与える。
痙攣してピクピクしている状態で、お腹を裂くとドバッと出血。
あとの一人が、天井からぶら下がったチェーン下部に片足を挟む。
逆さ吊りにされた豚が、奥の解体場へと流れていく。

解体場では、首と手足を落とし、内臓は下に流れているコンベアに。
レバー(肝臓)やハツ(心臓)と、見覚えのあるモノも繋がった状態。

さすがにこの状態では、うまそうだなぁとは感じえない。

「あとは皮を湯剥ぎをして、検査をします」

説明を聞きながら、巨大冷蔵庫に入る。
洗浄されて吊るされた枝肉がずらっと並ぶ。

一通り見た後は加工棟へ。

流れ作業で、枝肉をロース、カタロース、モモ、カタ、バラ、ヒレなどに解体。
店に納入される、よく見る形に近づいていく。
部位ごとに包まれ、ケースに詰められる。


そんなこんなで1時間。

お昼近間になり、敷地の隅に立つ食堂で昼食。

出かける前に主任から、
「俺が見学したときは、同伴2人の具合が悪くなった」
「見学の後に、モツ煮定食を食わされた」
「その2人、水しか飲めなかったよ」
「バイヤーも人が悪いよなぁ」

と、聞いていたものの、そんな昔の話、いまさらねぇ…と感じつつ。

テーブルに運ばれてきたものは、

やはり、モツ煮定食。

てか、メニューは他にもあるんですけど。

どんだけモツが好きなんだよ。

一人を除いて食欲旺盛。
「店で売ってるモツより、柔らかいじゃねーか」
「旨いなぁ。店のおばちゃん(賄いさん)もこれくらい作れないかなぁ」


窓からは心地よい風が吹き抜け、
青空と緑濃い土手が広がる、のどかな風景。

「命をいただく」

なんて、お上品には言えなくなりました。

もつ煮定食を前に一人、青ざめていた彼。

店まで無事に帰れたかなぁ。

j-rakuda

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