近未来のスーパーマーケット

時は203x年。

世の中から財布は消え去り、街には自動運転の車やバスが走行。あのローカルな信越本線や越後線も自動運転となり、運転席から「パターン終了しました」のアナウンスも聞こえなくなり、高齢者を乗せた列車は静かに田園の中を進みます。

買い物ではネット通販が主流となり、かつての荷受はもっぱらコンビニエンスストアか自宅でしたが、自動運転の配送車と配送スケジュール管理の一元化で、スマートフォンから到着希望時間を登録または変更すると、真夜中でも自宅付近までエコで静かな無人配送車が届けてくれます。顔認証か指紋認証で荷物を受け取ります。



周辺の田園風景は昔と変わらない、新潟のとあるスーパーマーケット。
20年前はバックヤードで肉と格闘していた畜産部のサブ君。いまや店長に昇格したそうで、もっと過酷な現場になっているのでしょうか?

畜産部 サブ君(当時)

開店準備

手動で行っていた開店マニュアルも自動化され、定時になると店内の各大型モニタには本日のお買い得品や、販促動画が流れ始めます。悪しき習慣の根源だった、改ざんし放題のタイムスタンプも、顔認証システムによって出退勤を自動登録。暇人のおもちゃだったパソコンは事務所から消え去り、シフト状況は手持ちのタブレットやスマートフォンから確認。不足のPOPもタブレットのワンタップで出力されます。

商品発注

まだ、担当者のカンにたよる部分はあるものの、発注タブレット画面にはAIがはじき出した予測数の表示が一般化し、必要であれば調整する程度。もちろん、天候予測や過去の販売実績を含んでAIは学習しています。ただ、急な売り場の変更や予測精度の面から、最後の微調整と確認は、担当者かパートさんが行います。

生鮮の商品づくり

お客の志向の変化や高齢化によって、急速に惣菜やミール類へ大きくシフト。店舗における生鮮の割合は大きく下がり、青果で言えば一本モノ、鮮魚で言えば丸モノ、畜産で言えば原木に近い品揃えは減少。プロセスセンターからの入荷比率は店舗によって異なりますが、インストアに占める技術レベルと作業割合も下がりました、作業が絞られたことにより、業界OBやセミリタイヤ組のパートやシニアアルバイトのほか、外国人労働者でも一定の品質管理が可能に。

惣菜やベーカリーの即食

かつては中華フェアが主体だったイベントも、東南アジアからヨーロッパ食材へと広がり、大幅に増えた外国人バックパッカーをも取り込もうと、メーカーを巻き込んだ商品開発が盛んに。ひとえに、惣菜キットの品質向上の賜物ですが、生鮮比率が下がる反面、バックヤードは惣菜工場の様相へと変化。製造の完全自動化を進めつつも、人の手を介す場面も多く、人員確保が急務です。

一般食品

ネット注文が主流となったため、品揃え程度となり、比率も大幅に下がりました。

レジ決済

顔認証、指紋認証、スマートフォン、クレジットカードのいずれかで決済。レジが消えた大手チェーン店もありますが、サブ君の店舗では形式上のレジは残り、レジ台に買い物かごを乗せるだけで合計金額を表示。いずれかの決済方法を選んで清算終了。レシートが必要であれば発行ボタンを押すだけで、チェッカーさんも居なくなりました。

昔の面影を残しつつも、10年も経つと世の中も変わりますね。

せっかくのタイムトラベルなので、サブ君にインタビューしてみましょう。

畜産部 サブ君(当時)

「店長。売れていますか?」
「お久しぶりです!惣菜や輸入食品も売れています。ただ、商品の切り替わりが早いので、なかなか大変で…。外国の方には、お刺身やお寿司といった和食が人気ですよ」

「昔のスーパーと比べると随分、変化したようですが」
「売り場づくりに人の手が必要なのは変わりませんが、勤怠や商品のほか売上といった数値管理が一元化して、紙での手作業が大幅に減りました。リアルタイムですべての数字が見て取れます。その分、数字を読み解く知識は必要ですが」

「商品発注もAI予測が一般化したようで」
「発注画面にAI予測が表示されるので、一定の経験があれば誰でも発注できます。本部は完全なAI化も視野に動いていますが、お客様ありきの商売なので、売り場の変化を柔軟に反映できるシステムを期待しています」

「冷凍庫にミイラ化した肉も無いわけで」
「たぶん、無いと思います(笑)」

「現金で買い物されるお客様はいますか」
「最後にデータに残っていたのはいつだろう…。あまり見かけませんね。キャッシュレスと並行で現金対応のレジもありますが、次の更新でどうなるか」

「お客様の層を教えてください」
「外国人移住者は増えていますが、地方は高齢化が進んで、若い人はあまり見かけなくなりました。高齢化と中小店舗の淘汰で、買い物難民が心配された時期もありましたが、ご年配の方もスマートフォンを使いこなせる世代となり、ネット注文も増えました。実際、店舗で商品を見比べたいお客様は、自動運転のカーシェアリングを使ってご来店される方もいらっしゃいます」

「人員不足は軽減しましたか」
「いえ、深刻です。(苦笑)会社としては社員を抱えること自体がコストとなるので、時代は変わっても、パートさんやアルバイトの負担となるのは変わりません。さすがにサービス残業は無くなりましたが、タイトです」

「ライバルは?」
「やはりコンビニさんですね。コンビニさんの商品開発に追いつくのは至難の業ですが、それ以上に、ご年配に向けたサービスも増えています。宅配は当然として、健康管理などを含めた見守り隊など、身近な地域サロンとしての役割を担っています。スーパーマーケットがどこまで近づけるか…にしても、人が足らないですね」

「スーパーの未来像を教えてください」
「未来像…うーん。近々、消費税が15%になるのでどうでしょう。2025年に12%となったばかりなのに。何とも描けないですが、お客様から足を運んでいただける売り場は、維持したいと考えています」

「あれ?指にリングが。ご結婚されましたか」
「ええ、上の娘が今年、やっと大学を卒業します。下の娘の卒業まではなんとか頑張らないと」

「お忙しい中、ありがとうございました」
「主任によろしくお伝えください(笑)」


時は過ぎても時代が変わっても、スーパーマーケットの苦悩は続くようです。


※この物語はフィクションです。

j-rakuda

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