ひとりごと

移動スーパーは高い志がないとできない件

「移動スーパーをやってみたい」と言う、個人事業主さんからの相談を受けます。その際、新潟県内でも展開しているスーパーマーケットはあるので、直接相談してみれば、ご自身の置かれている状況と運用条件を照らし合わせれば、自ずと答えは出てくるのではと。ほとんど丸投げの返答ですが…。(そもそも、企業担当者と話さないことには、何とも)

ただ、お伝えしたいのは、
「朝は暗いうちから夜も暗くなるまで、身を粉にして働く”ほどの”気持ちで、”仮に薄利でも”お客様の笑顔と幸せから自身の存在価値と生きがいを感じるような、高い志を持てる人間にしか、その大役は果たせないでしょう」

「夏の暑い日でも、積雪が多くて道がガタガタに凍結した真冬でも、無事故で何十キロも運転して、目的地まで向かわなくてはなりません。もちろん、無断欠勤なんてできませんから、家族や自分の生活を犠牲にすることも、多かれ少なかれあるかもしれません」

「リストラされて仕事がない。今の仕事が嫌になった。もっと儲けたい。この様な動機で始められるような、生易しいものではありません。もちろん、そのような動機でも、水を得た魚のように、多くのお客様に愛されて採算が取れたとしても、それはほんの一握りの人間かもしれません」


企業にもよりますが、移動スーパーを展開するスーパーマーケットが正社員として雇い入れ、労働管理や健康管理のほか、勤怠管理や福利厚生も保証してくれる環境であれば、奉仕も兼ねた販売と安全運転にも集中できるでしょう。

しかし、仮に個人事業主の場合、正社員以上に稼げるチャンスはあるものの、少なくても労働管理や健康管理のほか、勤怠管理や福利厚生は自分自身に求められます。

契約先のスーパーマーケットに大きく依存するので一概には言えませんが、仮に不都合な問題点を個人事業主任せにしてくる企業も、暗に出てこないとも限りませんので、しっかり見極められる考えを持っていないと、都合の良い下請けとして、かなりの悪条件で従事させられることも、無いとは言えないです。

出ては消える移動スーパー

そもそも、移動スーパーの歴史は長いものの、地方のスーパーマーケットが参入しても、遅かれ早かれ撤退する繰り返しです。大手企業でも偽善的にモデル地域を設定して、参入しているように見せてはいますが、ネットスーパーに重きを置くことから見ても、移動スーパーに対しての考え方は透けて見えるのかと。

しかしながら時代も令和となり、過去に例を見ないほど、地方は高齢化率が高くなっています。仮に10年・15年単位での一過性モデルであっても、一つのビジネスとして成り立つ環境も整ってしまったこともあり、地域によっては一定の需要はあると見えます。

その状況下、近年は降って湧いたかのような、移動スーパーへの企業参入のニュースが紙面をわかせています。テレビメディアや新聞では、輝かしい部分を中心にスポットを当てています。報道だけ見ると、新たなビジネスチャンス到来!とも受け取れ、研修会に多くの参加者が集まる映像が流されるものの、若干、違和感を覚えるのは自分だけでしょうか。
この中に果たして、高い志を持った人間が何人いるのだろかと。もちろん、研修会とはその中から企業が適性者を見極める場でもあるのですが。

意地悪な見方をすれば、仕事の無い中高年を個人事業主として消極的起業に至らせ、または目的の無い「起業ありき」で夢見る中高年を積極的起業に至らせる、とも見えなくはないかと。ただ、そんな悪意のある企業は無いと信じてはいますが、起業するにしても雇われるにしても、移動スーパーにおけるスポットの当たらない陰の部分も、見極める必要はあるのかと。

もちろん「稼げるケース」も報告されてはいますが、全部が全部、自分に当てはまるわけではありません。求人情報誌の高い時給が、自分に当てはまると勝手に受け取るのと同じです。商売とは、そんな簡単に読めるものではありません。本当に起業を考えているのなら、安易に飛びつく前に、一つ一つの問題点を冷静に洗い出す必要があります。

「ダメなら止めてしまえ」は、ありえません。

商品管理に限ってみても、実店舗ですら決して簡単ではない状況でありながら、例え、高性能な車両であっても、店舗以上に衛生管理と温度管理に注意を払うことは必須です。

しかも、商売相手は生身の人間です。実店舗においても、不特定多数のお客様が来店されますが、すべてのお客様が良心を持っているとは限りません。すべてのお客様が笑顔で接してくれるとは限りません。クレーマーもいるかもしれませんし、モンスターもいるかもしれませんし、それが原因でトラブルを抱えてしまう危険性もゼロではありません。

商売は継続を基本とするので、採算の取れそうな地域に絞って展開するのは当然としても、例えば集落の住民が1人もいなくなるまで。最後の最後まで、お客様1人1人を看取り、一緒に墓場まで入るくらいの気持ちでいられるでしょうか。特に中高年で事業を始める場合、ご自分の年齢や体調にも大きく左右されるので、いつかやってくる引退を含めて見据えなければならないのかと。

ご高齢のお客様を散々喜ばせておいて、言えますかね。
「自分に向いてないことが分かったから、採算が取れなくなったから、後継者が見つかりませんから、来月から来られません」なんて。

決して、移動スーパーを否定しているわけではなく、書いている自分も年齢を重ね、いつかはお世話になるかもしれません。ただ、参入する以上は、企業にしても個人事業主にしても、相当の覚悟をもったうえ、基本は奉仕事業だという認識で、従事していただきたいと願っております。

j-rakuda

管理人teru 新潟のスーパーマーケット情報サイトやってます。 PC:http://www.j-rakuda.com/