ひとりごと

残念な新店事情

高々とあがるアドバルーンに派手なのぼり。ピカピカの店舗には新鮮な食材がずらりと並び、にこやかな笑顔で従業員が迎えてくれるスーパーマーケットのオープニングセール。しかしながら、その華やかな舞台裏であるバックヤードに入ると人間臭い、ドタバタ劇が繰り広げられています。それはオープニングセール期間中のみに限らず、長期戦に及ぶため、よほどの出世欲が無い限り、新店への赴任は憂鬱なものとなるようです。

先に公開した人事異動の記事を書くうちに、新店の人員不足について感じるところがありましたので、少し書いてみます。

※以下はあくまで個人の知り得た場面であり、すべての新店に該当するわけではありません。

いつの時代も人員不足

そもそも、田舎の新店の多くは、何もない更地に店舗を建てるわけです。当然、社員もパートさんもバイト君もいない状態ですから、オープン数か月前から、チェーン店であれば近隣店の商圏も含めて、折り込みチラシやハローワークなどを通じて求人活動を行います。新店がオープンしてからオープニングセールと並行して新人教育を行う余裕はありませんから、試用期間も兼ねて近隣店で研修を行うケースは多いです。

ただ、従業員全員がゼロ知識で、ゼロから始めるわけにはいかないので、店長および管理職や一般社員は既存店から人事異動によって赴任します。言い方は適切ではありませんが、いくら新店に赴任した社員が精鋭であっても、最初のうちは各店からの「寄せ集め」でしかありません。仮に予定していた頭数が揃ったとして、既存店に基づいたマニュアルを用いたとしても、その新店の人員だけで独り立ちできるには一定の時間を要します。企業や店舗規模にもよりますが、少なくとも半年は要するのではないでしょうか。

そもそも、基本的に人員不足の業界なので、仮に営業年数の長い古参店で、技術や能力の高い人員で占められていても、日々の仕事をこなすのは簡単ではありません。それが単に寄せ集めのうえ、新人パートさんの技術が一定基準に達していない新店の場合、すべては社員の負担になるわけです。

それも新店の問題のみで終わるはずもなく、
「ようやく新入社員が育ったと思ったら、また新店に取られる」
「やっと新入社員が育ったと思ったら、また移動で取られる」
「人がいないのに新店ばかり作って、人員不足で既存店を潰す気か」
「新店なんて、本部の人間だけで切り盛りしろよ。ふざけんな」

社員としては現場が少しでも余裕の持てるよう、作業ではなく販売に注視できるように願い、新入社員を育てるのです。一方、本部としては、企業の成長を見込んで、全体を見て出店を続けます。従業員やその家族にご飯を食べさせなければなりません。そのための新入社員教育でもあるのです。

流通業は「立ち止まったら、それで終わり」とも言われるように、常に出店を続け、売上や利益を伸ばし続けなければ、競合に商圏を食われてしまう危険にさらされています。既存店のみで数字を上げられるに越したことはありませんが、既存店のかさ上げと並行して出店を続けない限り、現実的には厳しいことは誰もが感じています。

社員全員が納得できる方向で進めばラッキーでしょうが、双方の考えが交わることの無い点は、悩ましいところ。酷なようですが、出店しようがしまいが人員不足であることには変わりないのかと。

ほぼワンオペ

パートさんやバイト君の頭数が揃わないうえに、新人パートさんの技術が一定基準に達しておらず、ほとんどワンオペ状態で主任が作業をこなすケースも。バイヤーや本部の人間が応援に入ったところで、焼け石に水。数か月後には、とうとうバックヤードで動けなくなってしまいました。

他の社員が救急車を呼ぼうとしたところ、店長が「救急車を呼ぶのは体裁が悪い」と、車で自宅に連れて帰りました。

結局、家族から病院へ連れて行ってもらい、点滴処置で終わりましたが、過労死したらどうするのでしょう。
病院ではなく、あえて自宅へ連れて帰る、店長の腹黒さを垣間見る一件。
世が世ならSNSにさらされて、ブラック認定ですが。

高くついた人件費

先の事態で学習したのか、次の新店では近隣店とメーカーの協力を得て、”主任がぶっ倒れない程度の”シフトを組みました。当面はうまく回っていましたが、クセ者主任が数名含まれていたため、パートさんが辞める事態に。狭い田舎町です。悪い噂はすぐに広まり、パート募集に人が集まらなくなりました。

幸い、今でいうWワークのバイト君が、時間延長して働いてくれましたが、数年間は新入社員を2人配置していました。
「新人2人、預けられてもねぇ」
髭が伸びた主任のぼやきを思い出します。

惣菜バケツリレー

乱暴な話、畜産の場合は腕が悪くても、肉が切れていれば問題ありませんが、お惣菜は味が命。まさか新店の惣菜が、揚げすぎた、または火が通っていないというわけにはいきません。技術者であるフライヤーの腕にかかっているため、当然主任や社員に負担がかかります。オープンから間もなく、腱鞘炎で腕が上がらなくなってしまい社員がダウン。バイヤーが応援に入るものの、作業が間に合わない!

近隣店に応援要請したところ、「こっちだって人がいなんだよ」とつれないお返事。折衷案として、店間を切って近隣店で揚げてもらい、両店舗の中間地点で店長同士がバケツリレーで受け渡すことに。いい年をしたオジサンが、必死な顔をして「ちくわの天ぷら」を運んでいた姿は、今思い出してもなんとも滑稽で…と言ったら怒られますね。

人員不足については、コンサルタントの先生がさまざまな改善策を提案されていますが、地方の中小店舗では何も変わるはずもなく、また、そう簡単に変えられるものでもないのかと。

薄利多売の性質上、人件費は上げられません。
新店に限らず、人員不足は永遠のテーマなのかと。

j-rakuda

管理人teru 新潟のスーパーマーケット情報サイトやってます。 PC:http://www.j-rakuda.com/