主任の回想録

お局と消火訓練

年に一度、我が店舗でも消火訓練を行います。訓練の前に消防士さんと店長が、消火器の位置や避難経路の確認をするのですが、当日の朝になると、店内チェックの大役を仰せつかった、お局(食品主任)が張り切って巡回します。

「避難口側に肉屋のトレー(ロット箱)があるけど邪魔よ」
「すみません。すぐ取りに行きます」

「消火器の前に、セールののぼり置かないでよ」
「すみません。品出し終わったら片づけようと…」

「店長!ホース格納庫の前に車停めないでください」
「すまん。銀行行こうと思って、すぐ移動するつもりで…」

これからやるつもりだった、いまやろうとしていたところ、と言い訳は通用しません。
この日ばかりは店長も、借りてきた猫のよう。

そして、パートさんにも指摘されます。
「主任!試食のホットプレート、終わったらコンセントを抜いてくださいよ」
「冷蔵ケースのコンセント、たこ足が過ぎませんか」
「パッカーの上の缶コーヒー、置きっぱなしですよ」

こういう細かいチェックは、女性の方が優れているようで、男どもはオタオタ。
ドタバタ片付けていると、駐車場に消防車がやってきました。


「えーまずはこのポールを火元に見立てて、消火器で放水していただきます」
「今は水が入っていますが、本物は白い泡状の液体が入っています」
「みなさん順番に放水してください」

「店長!まずはお手本見せてよ」
「え…先にお局やってくれよ」
「ダメよ店長!頼りないわね」

ギョーザの皮の品切れは、この世の終わりみたいに怒るくせに。
少しは頼りがいのあるところを見せなさいよ、店長。

「店長!もっとしっかりホース持って!」
「あれ?水が止まらない!お局、ここ押せばいいのか」
「店長!こっちに向けないで!スカートが濡れるでしょ」
「キャー」(パートさん悲鳴)

結局、店長はホースを放してしまい、消火器が暴発。

嫁にも頭が上がらず、お局にも頭が上がらず。
お客を守るという危機感をもちなさいよ。



消火器での訓練が終わると、本格的な消防ホースでの訓練。
消防士さんを交えて、店の屋根に放水します。

「あ…ロゴの脇のカラスのフン落ちるかな」
「あ、落ちた落ちた。やったぞお局!」

本当の火災だったらという危機感は無いのか。
この店長。本当に踏んづけてやりたい。

消火訓練が終わると、駐車場の隅で人工呼吸の訓練。
消防士さんの指示通りやるものの、人命にかかわることなので、
実際にそういう状況になったら、やれる自信がないのです。

「これが、お客さんだったら」
「素人が下手にやらない方がいいのかなぁ」

不安な気持ちで見ていると、

「チョット!あの隊員さん。イイ男じゃない」
「やだお局主任。ああいうタイプが好みですかぁ?」

「今年は当たり年ね。みんな若いじゃない」
「お局主任とは年が違いすぎますよぉ」

「失礼ね!あんた若いんだからアタックしなさいよ」
「私は年上がイイわ…隊長さん渋い。奥さんいますよね」

不純な気持ちで訓練するんじゃない!
人命がかかっているんですよ。

「やっぱり緊張するな。次はお局の番だよ」
「やだ店長ぉ。人前でそんなぁ…恥ずかしいわ」

なんでここだけオンナになるんだよ。

j-rakuda

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