一消費者が見た渦

若干、梅雨の湿っぽさを残しつつ、日差しも強くなってきた今日この頃。従来であれば、夏に向けた売り場づくりとともに、夏商戦の販売計画を眺めながら、本番に向けた脳内シミュレーションも活発になります。特に 2020年(令和2年)は1964年 (昭和39年)より、56年ぶりに開催される東京オリンピックに向けて、近年進んでいたグローバル化やインバウンドと同様に、一般消費者の動向にも期待されておりました。

新潟のような田舎の垢ぬけない素朴な観光地でさえ、少しずつ増えている外国人観光客の姿を見るに、少なからず、そのおこぼれに与れるのではないかと、期待の声も多く聞きました。

しかしながら、2月頃から例の事態となり、世の中は一変。
恐らく、歴史に残る一大事でしょうから、記憶が鮮明な今、自分が目撃した状況を記録しておきます。

国破れて山河在り

外出自粛によって、街からは外国人観光客どころか、日本人の姿すらも消え去り、インバウンド需要はほぼ蒸発。隣り合う立地でも、販売形態や業種が異なるだけで、昨年対比を上回る売上を記録し、家族総出で注文に応える店舗がある反面、線を引いたように客足がパタリと途絶え、臨時休業の貼り紙が、いつしか完全閉店の文面へと変わってしまう店舗も。 職種や業態によって、短期間でここまで一気に格差が表れることは、正月三が日には、多くの人が想像すらしていかなったのかと。

この状況下において、幸いにも収入が大きく落ち込まなかった人たちも、全くもって他人事ではなく、その影響が自分の身にいつ降りかかるかわからない恐怖を感じています。当然のこと、なるべく支出を抑えようと、外食の多かったご家庭でも、自宅での調理と合わせてスーパーマーケットで購入できる値頃な中食に切り替えた話も聞きます。

結果的にスーパーマーケットへの依存度は高くなり、売上が昨年対比を大きく上回った店舗も少なくないようです。もっとも、その発端は外出制限における「おこもり」のための買い占め出しではありますが、お財布の自粛制限は習慣化していくものと見られます。まあ、バブル景気崩壊以降の「失われた20年」において、すでに習慣化してはいるのですが。

例えが不適切かつ、その比ではないのかもしれませんが、自分世代の親や祖父母が目の当たりにしたであろう、戦後の焼け野原と重ねて見えるわけです。今回の件で多くのものを失いましたが、外へ出て周囲を見渡せば、青い空と新緑の山々と、青々と広がる水田。戦時下のような焼け野原が広がらないことは、せめてもの救いではあります。そこはまさに「国破れて山河在り」ではないかと思うわけです。

売り場から消えたもの

店舗で従事されている皆さんにとっては、非常に過酷な状況であり、折り込みチラシの自粛や不安定な入荷状況と合わせると、客動向が読み切れない不安定要素の多い時期が続いたのかと察します。そんな気持ちを知る由もなく、家族総出で店頭に押し寄せ、買えるだけ買い占める輩も多かったわけですが、さまざまな商品が品薄または品切れとなりました。地域や店舗によって状況は異なりますが、自分が見た中で一通り挙げてみます。

マスク・アルコール消毒液

個人的な話になりますが、花粉症(鼻炎)のため、クリニックで処方してもらうお薬に加えてマスクは欠かせません。以前はシーズン直前に購入していたものの、インフルエンザが大流行した年があり、軒並みマスクが売り切れ、目と鼻を真っ赤にした「地獄の数か月」を過ごした危機感から、近年では年末に一定数を買い込んでおりました。

行きつけの店舗では、年末から春先にかけてレジ側のエンドに「風邪・花粉症対策に」と大量陳列されているのですが、メディアの第一報からの週末には、マスクは忽然と消え、その代わりにキッチンペーパーやウエットティッシュのほか、アルコール消毒液が積まれておりました。しかし、それは序章に過ぎず、時間の経過とともに、それらも売り場から消え去り、いつしかフライパンやタジン鍋、アルミホイルが積まれるように。

「なんでフライパンにタジン鍋?」と不思議に感じていましたが、今思えば、おこもり事情を見据えた商品選定だったのでしょうか。単に並べる商品が無かったから…というわけでは、なかったのかも。

トイレットペーパー・キッチンペーパー

SNSで拡散された中国製造説。
物流と生産が途絶え、輸入が無くなるとのデマに、
「どう考えても国産でしょうに。んなわきゃない」

しかしながら、週末の店頭からはトイレットペーパーもキッチンペーパーも消えました。

当初、メディアでは「デマに流される日本人」「デマを信じる人」が多かったため、今回の騒動になったと報道しておりました。しかしながら、デマであることは多くの人は知っていて、実はデマか真実かなんてどうでもよく、SNSで拡散された以上は、品切れは必至という認識から店舗へ駆けつけた人が大半だったと察します。ただ、オイルショックを経験した、日中暇を持て余しているご年配が、デマを真に受けて買い占めに走るケースが発端だったという話もあります。

某ドラッグストアで「ウチにはあと1ロールしかないのよ!何とかして」と、店員相手に悲痛な叫びをあげている客もいましたが、「店で叫ぶ暇があったら、さっさと帰って、ご近所から1ロールくらい借りろよ」と思ったわけです。

パスタ・スパゲティ・小麦粉

軒並み飲食店が営業自粛のうえ、洋食中心のご家庭には欠かせない食材ということ、「おこもり」自炊も増える中、多めの需要があったのでしょうか。都市部ではお米も品切れしたと聞きましたが、少なくとも自分が調査で行った新潟県内の店舗では、お米の棚が空っぽという状況は見られませんでした。

「子どもたちが家にいるから、家でパンを焼こうと思って」
「夫がリモートで家にいるから、揚げ物や天ぷら作らないと」

自分ひとりだけであれば、買ったほうが安上がりなのでしょうが、頭数が多いと逆に高くついてしまいますよね。後者は常の手抜きを知られたくないとの話でしたが、そもそもスーパーの惣菜が手抜きという発想自体が、もはや時代錯誤という気も。

接客の変化

レジの防護(シート・手袋・マスク)、レジ待ちのソーシャルディスタンス(社会距離)、折り込みチラシの自粛、惣菜やベーカリーのばら売り中止、袋詰め中止、買い物時間の分散など。

当たり前に見えていた景色も、店舗フォーマットの見直しを行った企業では変化も見えてきました。レジについては、キャッシュレス比率を高めることによって、混雑や接近を改善できると見られますし、ばら売りはフードカバーの設置で最低限の対応は可能かと見られます。折り込みチラシは、当面「朝市」「夕市」などのタイムセールを控える程度としましたが、段階的に従来に戻っています。

さて、ただ単につらつらと書きましたが、この文章を1年後の自分が読んでどう感じるのか。
どんな世の中になっているのでしょう。

j-rakuda

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